救急外来をやめよう

医療

平成初期の事件ですがこれで確定となったんでしょうか?この病院はこのあとどういう対策をとったのでしょうか?怖すぎる事件です。ちなみに支払えと言われているのは病院なので個人ではないですね。

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

Aは,本件事故当日被告病院に電話した際,原告は左眼を打撲しているので,同病院で目の診察が可能か否か尋ねたところ,被告病院は,確認して折り返し電話する旨答え,数分後に被告病院から,来院するよう回答があった。

ここがまずポイントのようです。やはり患者がここは目の診察をしてくれるというふうに思っているならしなければならないようです。専門外で見てあげようなんて決して思ってはいけません。

これにより眼の異常を発見すれば,更に精密眼底検査,レントゲン検査,RAPD検査,エコー検査,前眼部検査等を行うべきであり,それができないのであれば,直ちに他院を受診するよう指示すべき医療契約上の注意義務があった。

検査すべきかどうかは後出しジャンケンで裁判官に決められてしまいます。

直ちに高度専門医療機関への転医を指示すべき医療契約上の注意義務があった

翌日受診しているんですよ?

D医師は,瞳孔の対光反応の検査を行う前に散瞳薬を使用するという基本的なミスを侵したため,RAPD検査が実施できず,それぞれ上記の注意義務に違反した。被告は,D医師において,RAPD検査を実施していた旨主張するが,カルテに記載がない以上それはされていないと解される

カルテ書いていないのはまぁ落ち度ですね。

被告は,高度の硝子体出血のため平成8年4月22日及び翌23日のいずれの時点でも眼底の精密検査は不可能であった旨主張するが,原告が同月22日に被告病院で受診したのは本件事故の25分後の時点であり,出血の範囲はそれほど拡大していなかったはずであるから,上記検査は可能であった

はい、検査可能かどうかは裁判官が後出しジャンケンで決めます。

本件では,高度の視力低下,対光反射喪失,網膜混濁及び視神経乳頭部の出血等の所見で,原告の疾患を外傷性視神経障害,網膜中心動静脈閉塞とほぼ絞り込めたのであって,診断は十分に可能であり,これを想定した治療を開始すべきであった。

そうですね。あとからならいくらでも言えます。

原告は,本件事故後25分間経過した時点である平成8年4月22日午後9時15分ころ被告病院で受診しており,被告病院がこのときに前記の諸検査を行い,更に,精密検査を行うか,転医指示をしていれば,早期診断,早期治療が可能だったのであり,これにより,ステロイド大量点滴療法等の上記各治療が可能であったから,高度な視力障害を避けることができた

専門でなくてもここまでできないといけないそうです。

被告の責任原因について
 前記の治療義務違反及び転医指示義務違反は,原告被告間の医療契約上の注意義務に違反するとともに不法行為を構成するところ,被告は,B医師,C医師及びD医師の使用者であるから,上記注意義務違反について,原告に対し債務不履行責任及び使用者責任を負う。

結局病院が悪いとされています。

 当日の当直医であるB医師は,幼児が眼を怪我をして泣いているとの通報により,取り敢えず自己のできる範囲で原告を診察してやりたいと考え,来院を応諾したものであり,その行為自体を非難することはできない。
 なお,被告病院の夜間救急外来の体制としては,当日の当直科以外の救急患者については,担当科以外である旨を伝え,患者側がなおかつ,受診を希望する場合には,受け入れ,診察した後に,場合により専門医の応援等を求める体制であった。

たいていの病院がこれですよね。応援を求めるってのはオンコールという仕組みがお金を支払われてまともに機能していたのかが気になります。

Aは,原告の受傷状況を見ておらず,また,原告は当時2歳3か月の幼児であったため,B医師において必ずしも十分な眼外傷についての情報を得られなかったのであるから,眼科の専門医でないB医師が,軽傷と判断したことはやむを得ないことであり,同医師の判断が,過失を構成するほどの強い違法性を有するものではない。

ここまで言った上で次が怖いです

診断をした者が麻酔医であっても,少なくとも,本件事故の態様の詳細を聞き取り,左眼自体に何らかの傷害が生ずべき態様であることを把握し,麻酔医でも可能な直接対光反応検査を実施する義務,ないし,眼外傷の内容,程度を知るためには直接対光反応検査が有用であるとの基礎知識がない程,眼科の知識が乏しいのであれば,自らに眼科の知識が乏しいことを自覚した上,被告病院の眼科医を呼ぶ,眼科医の診断を受けることができる病院への転医の手続をとる,或いは,少なくとも,原告側に即時,眼科医への受診を指示する義務があると解すべきである

被告は,麻酔医であるB医師とすれば,その診療行為に,違法性まではない旨主張する。
 しかし,Aは,受診前に,原告の受傷部位が左下眼瞼であること,受傷態様が机の角で打ったものであることを電話で伝えた上,診察が出来るかを問い合わせたのに対し,受診を認めたものであること,前記認定の被告病院の規模や性質等を考慮すると,夜間の救急外来で,他科医が診察をしたことを十分考慮しても,上記の電話の内容で,眼科医以外であっても,受傷態様からすると,眼自体の傷害の可能性があることの把握はできるから,それを知りながら診療した以上,少なくとも,ア記載の程度の義務はあると解すべきである。

そうであるのに,B医師は,直接対光反応検査を実施せず,被告病院の眼科医を呼ぶこと,眼科医の診断を受けることができる病院への転医の手続をとること,又は,原告側に,即時,眼科医への受診を指示することをしなかった。 したがって,B医師の診察は,被告病院において期待される医療水準に達していない,違法な行為と解すべきである。

神大病院にも結構きつくいってますよね。

神大病院で原告に投与されたステロイドの量は,原告の体重を考慮しても,漸減療法,パルス療法のいずれの投与量と比べても少量であって,漸減療法において,併せて投与されるべき高浸透圧製剤の投与もなく,投与の期間も,いずれの療法と比べても3日間と短期であって,投与された時期も,受傷から4日後である。 これらの点を考慮すると,神大病院でのステロイド療法が,原告の視力回復に有効でなかったことは,より早期の,一般的に行われているステロイド大量点滴療法が,原告の視力回復に有効でないことを裏付ける事実とはならない

これで救急外来をしていた病院が2000万円の過失というのは解せません。

どう対策すればいいのでしょうか?病院としてはオンコール体制の確立というかもしれませんがそんなお金はないはずです。医師側からすれば専門外はすべて断るのが一番と考えられます。目の下をぶつけただけでこんなことがあるなんて眼科以外の医師からすれば思いもよらぬことです。そして可能であれば救急外来をやらない。それにつきます。

この国は現場を知らない裁判官によってむちゃくちゃにされているような気がしてなりません。この事件がおきないようにするにはどうすればいいのでしょうか?病院を集約化して全科の医師が当直すればいい?離島だったらヘリで運ばないといけないの?などなどそのコストはすべて国民に返ってくるでしょう。