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不眠症とは、『眠れない病気ではなく、眠れないことを気に病む病気』である

医療

これはかなり核心をついていると思います。病は気からというように、困っているのであれば病気ですが困っていないのであれば病気ではないのです。

似たような概念として

パニック障害は「発作の病気」ではなく、「発作を恐れる病気」である。

みたいなものもあります。

医療の現場では、「検査値」や「診断名」だけでなく、患者さん自身がどのような“困り感”を持っているかを丁寧に聞き取ることが、実はとても大切ですよね。

たとえば、「不眠」で受診される方のなかには、医学的な基準で見れば十分な睡眠時間を確保できているにもかかわらず、「寝つきが悪い」「もっと眠りたいのに眠れない」と強い不安や不満を抱いている場合があります。逆に、客観的に見てかなり睡眠が分断されているのに、本人は全く気にしていないこともあります。

このように、「困っているかどうか」は人それぞれであり、医学的な“異常”と主観的な“困り感”が必ずしも一致しません。そのため、医療者はまず患者さんの話に耳を傾け、「何が一番困っているのか」「本当に解決したい問題はどこにあるのか」を一緒に考える必要があります。

一方で、患者さんが“困り感”を訴えている場合でも、必ずしも薬や医療介入が最善とは限りません。たとえば、眠れないことを気に病むあまり、薬に頼りすぎてしまう方もいます。その場合は、「眠れないことをどう受け止めるか」「生活習慣の工夫で改善できることはないか」といった視点も大切にしながら、医療と日常生活のバランスを考えます。

また、最近では、健康診断や人間ドックで偶然発見された“異常値”を気にするあまり、「何か大きな病気ではないか」と心配して受診する人も増えています。医療者としては、検査値や画像所見の説明だけでなく、「今の状態が本当に日常生活に支障をきたしているのか」「治療介入のメリット・デメリット」についても丁寧に説明し、患者さん自身が納得して選択できるようサポートすることが求められます。

結局のところ、医療者の最大の役割は、「困っている人の困りごとを少しでも軽くすること」です。しかしその“困りごと”が本当に“医療”によって解決できるものなのか、それとも生活や価値観の見直しが必要なのか――この見極めと対話こそが、現代の医療現場に求められる力ではないでしょうか。

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